君を待つ間

先生からの連絡を待つ間、現在の携帯に入っているメェルを眺めていた。
再会してから六年は経ったであろうか色々なことがあった。
わたくしが何もかも嫌になった秋、ざっくり腕を切った。 身体の中の膿を出しきりたかったのだ。 しかしこの時の衝動は落ち着いておりながらも腕を切った覚えはない。 リストカットというよりアームカット派である。死にたくないのだ。
この時、朝方であったが何かを感じた先生からメェルがきた。
他愛のない内容でかつ逆なでしない感じのものだった。

先生は気づいたのだ。 止めないとわたくしが終わると。
わたくしが外にいる。と、 メェルを打ったがすぐさま携帯電話が鳴った。出るのを躊躇していた。 わたくしはカッターを持ったまま外にいた。 何度も携帯電話が鳴り仕方なく電話に出た。
声を聞きたかったのかもしれない。
わたくしは号泣しながら橋の上の地べたに座っていた。
先生は落ち着きながら、車の音がするから国道だね、どこにいる?と、聞いてきた。
わたくしは言った。
橋の上。
その辺に橋ってあったっけ?君、コートは着てるの?
秋の朝方の寒さを心配していた。 とりあえずもうどうでもよくなり電話をきったが、わたくしが電話に出るまで先生は鳴らし続けた。
嫌になるほど電話が鳴っていた。
仕方なく電話に出ると先生は優しく、
寒いだろうから帰るんだよ、家からは近いのかね? と、言い色々なことをさとされた。

その時である。

早朝にカッター片手に泣きながら座り込んでいるわたくしを見たどこかの人がいきなり車を停めて降りてきた。

おねぇちゃんこんなところで何やってんだ!!
一方的に怒鳴られたあげくカッターを橋の下に捨てられた。
わたくしは先生と喋っているだけである。

先生は電話口で、誰か来た?と、言った。
わたくしは知らないおじさんに怒られた。と、言った。
先生は、
うけるね。と、笑った。この時に何か約束をしたのだが、りん、認知症だから覚えていないと思う。と、先生は、りんちゃん先生ほんとうけるね。と、笑った。

あのしつこく鳴った携帯電話ぐらい先生からの連絡を待っている。
あれだけ煩わしかったのにわたくしはわがままである。

先日先生は言った。

前に話したかもだけど、タバコ買いにいくわぁって、ふらっと出かけてそのまま死亡ってのが案外理想なのかも。
対人関係、生存そのものがめんどくさくなってきてるぜ。おれ。

もしかすると先生が連絡を待っているのかもしれない。