先生もわたくしも予知夢というものをみる。
世間では逆夢などと言葉があるが予知夢とはいったいなんなのであろう。先を見るということはどういう意味があるのだろう。人間はショックを和らげる為に睡眠が必要である。
脳内の記憶をフォルダに分けいらない情報は夢として表れ忘れることができる。とは、フランシスクリック氏の説だったと思う。
予知夢とは先にショックをみるのである。
先生との仲直りも予知夢のようなものであったが、わたくし達はショックを和らげる効果を持っていないのかとたまに思うことがある。
先にショックを受けその後もそのショックという名の呪縛から解けないのである。良い夢ならば問題は無いのだが大半は不幸を持ち合わせる結果となる。
昨日の先生からのメェルはこうである。

どうでもいい話なんだが。
俺、予知夢を見るって話した事あるじゃない。 それ、どうやら離別やら別れに特化したものっぽいのよ。経験的に。
でもさー、
予測可能、回避不可能なら見る意味って全く無いよな。
盲腸とか尾骨とか扁桃腺とかそんな感じで何かのオマケでしかないよな。ま、それだけなんだけど。

わたくし達は無駄な先取り情報はいらないのである。
二人で、やっぱりか。そんな落胆はしたくないのである。
人を想いやっているからこそ先のショックのほうが楽だと言う人もいる。
わたくしは言う。
ならばせめて後味の良い夢にしてほしい。と。先に待ち構える不幸をみては寝ながらにして頻脈になるのだ。

名は体を表す。
先生の名前は、鎧の重さを知る。
わたくしの名前は、複雑に入り組んでいる。と、いった意味合いがある。
前世が本当にあるのかは分からないが二人の前世は占いによると、シヴァ神。黒い洋服を身に付けた、破壊と創造の神である。前世で何かを壊した人は来世で何かを創ると言われている。

先生とわたくしは物を創る人間であり黒が好きである。
ならば現世で破壊も持ち合わせているのではないか。
これが二人による破滅であれば先が楽になる。 その代わり、もう痛みはいらない。
なのにわたくし達は先立った人間の分まで苦しんで生きてゆかなければならない。

出逢った人間、
通りすぎた人間。

先生とわたくし二人の先を分かっているのはもしかすると先立った人間なのかもしれない。
先生と二人ならば朽ち果ててもかまわない。
そう思っているのはわたくしだけであろう。

先生は言った。

『つまらない人生だよな』

楽しみ方とは自分で探すものだが、わたくし達で作品を残しても何の意味も無いような気がしてきた。