二十五日

二十五日の日の朝方、妙な感覚にとらわれて目が覚めた。
窓を見るとあるはずのない男性の腕が外から内側へと伸びてきた。
その腕は窓のロックを外そうとしていた。夢か現実なのかは分からないが恐怖心を覚えた。
わたくしの寝ている隣を見ると亡くなった母親が横たわっていた。

その夜、先生からなにげにメェルがきた。
俺、超調子が悪いから君の夢に出るかもね。
過去の傾向だと俺が調子悪い時に君の夢によく出てるみたいだし。腕の感じは俺ではないな。
でも俺が発している毒のような電波から母親が守ってくれたのかもね。
わたくしはその時に気がついた。
二十五日は母親の月命日でありわたくしの産まれた日、先生の産まれた日も二十五日である。
時計を見ると自分の誕生日と同じ時間って多いよね。
わたくし達の二十五日とはいつも疲れている。 月末の疲れとは違った何かが起こる。
人間は亡くなった時の気候が産まれた日の気候に酷似すると言われている。
月は違うが二十五日に産まれた二人は色々と調べたことがあった。ほとんどのバイオリズムが同じ結果であった。


【呼吸】
夏になるとわたくしは呼吸がしづらくなる。
過呼吸を起こし病院へ運ばれた時には心電図ですら計測できないほどの脈拍数であった。再度計測すると二百という数字を叩き出していた。
毎日、呼吸がうまくできずに会社の机に紙袋を置きなんとか呼吸をしながら仕事をしていた。
それを我慢していた結果パニック障害になってしまった。
過呼吸とは逆に紙袋はいらなくなったが過度のストレスから手まで震えるようになってしまった。
物を創る人間の終わりを示していた。
現にこう暑いと腹式呼吸はできず甲状腺の辺りが張ってくる。
脳には酸素が届いていないような感じがする。 耳もこもる。
それが四年目になるのだが、車の助手席や交通機関、デパートや外食すべて健康だった頃のことが奪われた。
特定以外の人間との会話ですら疲れてしまった。先生はというとリウマチを患ってから就寝時に仰向けに寝ると呼吸ができないと言い出した。
わたくしは腎臓が弱いので仰向けに寝た次の日には自力では起き上がれない。背中に痛みが走る。呼吸がしづらくても先生も同じだから分かってくれる。

『ゆるくいけよ』

就寝時わたくしの呼吸もゆっくりになる。
その時だけが幸せである。
寝起きの苦しさに思わず言った。

先生…

その時、部屋中の窓ガラスが揺れた。
先生が酸素を届けてくれたのかもしれない。