停滞期

わたくしは高校生の頃、精神が崩壊した。
何日も眠れず歩くのがやっとになった。
小学生の時に母親の鬱病とアルコール中毒が原因で両親は離婚をした。
その後は子宮を無くしたり難病を患い母親はわたくしの誕生日に他界した。
そんな母親を見て育ったので高校生の時、自ら精神科に行った。
冬の低い太陽は覚えているがこの当時の記憶がほとんど無い。
ただ十代にしては薬が効かなくどんどん強くなっていったのを覚えている。
この病院の移転に伴い受診を止めた。
この段階で完全に治さなかったのが悪いのか年中、死にたいと思うようになっていた。
ただ半身不随の父親を残しては死ねないと漠然と思っていた。

春になれば早朝からの仕事始めに憂鬱になり、夏になれば照りつける太陽になんてちっぽけで何でもない人間だと思い、秋になれば落ち葉が舞う道に子どもの頃の嫌な記憶がよみがえり、冬が訪れるとどうしてこんな田舎に引っ越してきたのかと不憫に思うのである。
母方の祖父は難儀な生活に何度も帰ってこいと言った。
それでもこのような田舎で先生は育ってきたのだ。
わたくしは思う。
海のある街で育った。 この海の無い生活に嫌気がさしているのだ。
ましてや父親の故郷のこの田舎で今は生活しているのだが先代はこの町を開拓した。
開拓者の1人の孫として後世に伝えていかなければならないものがある。先代に比べれば重みなど無い人間だ。

【季節】
同じタイプの先生と季節を越えてゆきたい。

その為には生きるのだ。繰り返す生活でも同じ朝など無い。
毎日、景色は違うのだ。先生には毎日感謝している。

共に秋を迎えよう。

昨夜のこと先生から久しぶりにメェルがきた。
先週から何もかもがうまくいかない。ずっとこの曲をループしながら作業していた。と、曲が添付されていた。
ひとまず何を言ってあげたら良いのか分からず曲を聴いてみた。
静かな曲かと思えば2006年のフレンチハードコア。
今日は、ずーっと聴いていた。と、言った。
晩ごはん中にメェルをくれていたようだがわたくしは出かける用事があることを告げると、

行ってらっしゃい。

ただそれだけであった。
ただでさえ距離を感じるのに先生を置いて出かけるような気がしてならなかった。
先生は好きな人にふられてからのダメージが酷いのであろう。
どん底の中から少しでも這い上がろうとしている先生。
お盆休みなどあるわけもなくひたすら働いている。
会社では新しいコンテンツを創っているのだが女性向けである。
その度に好きな人を思い出すのかもしれない。そうしては恋愛感情のないわたくしに何かを聞いてもらいたいのであろう。先生ぐらいのクラスになると普通の言葉では通用しない。
記号と象徴のように会話を進めていかないと簡単には納得はしない。

思考とは、思うと考えるといった二つの文字で出来ている。
先生の立場を思い、導きを考えるがこの流れが変わる気配すら感じられない。
わたくしが帰宅してから連絡してあげなかったことに後悔している。
昨夜の先生は早く帰っていた。
いつもなら相手になってあげれたのだが、
少しずつズレが生じている。
わたくしは先生が這い上がれるような言葉を探している。