電話

わたくしが仮眠から目が覚めると先程まで鳴っていたであろう携帯電話が光っていた。
先生からであった。
メールは毎日のようにしているが電話は久しぶりである。三十秒近く鳴らしてあった。
危機感は感じられなかったので頭がはっきりしてからかけ直してみた。あの穏やかな声で先生が出た。
わたくしは携帯電話の誤作動?と、聞いてみた。
いや、電話した。
俺さぁ、有給の消化でまるっと休みだからさ地元に帰ってきた。
他に会いたい奴もいないから君に顔見せしようと思って。
でもあれだろ?
君、外食できないべ?んで、電話してみた。
俺んち呼ぶのもなんだしさ。

以前、先生の実家で深夜まで二人っきりで呑んでから先生の父親がうるさいのである。
父親いわく、彼氏のいる女性と彼女のいない息子が二人っきりで呑んでいるのがおかしいと言うのだ。
わたくし達にはこちらのほうが理解に苦しむ。 それよりも先生の薬の量が気になり聞いてみたら大量に持ってきていた。わたくしは言った。
七千円もかけて身体を蝕んでいるんだよ、
お金がもったいないじゃん。

先生は言った。

俺の場合、趣味ですから。

たっかい趣味だね!!
エリートは金遣いが違うわ!!
あれだぜ?
一回、飯食いに行ったって七千円はかかるべ。 しかも俺、
何もしなくても金入ってくるニートだしさ。

先生、知ってる?薬にお金かける人間ってそれ薬中だよ。

わたくしは逆に安定剤の減薬から目の前がキラキラしている。これをファンタジーな世界だよ。と、言ったら先生は笑っていた。
君の場合、薬足りてないんだろ?

そだよ、お金がもったいないから。

先生は言った。
パニックで車駄目な人間が車二台持ってるほうがおかしいべ?

いいの!!人間いつ死ぬか分からないんだからね!!しかもセダンはインチアップしてるから年中夏タイヤ、だからジムニー買った。
ジムニーは友達も乗れるような保険にしてあるし。
君の金遣いのほうが分からんわ!!と、言われた。
先生? 類は友を呼ぶって言うんだよ。

確かに先生は高尚な無職かもしれないけど原点回帰すれば同じ人種。

まぁ、りんは来年成り上がるけどね。

そんな先生は来月あたりから独立する。

最後に先生は言った。
『君は間違っていないと思うよ』

やはり良き理解者である。居心地が良いのだ。 この半分わたくしの保護者だと言う同級生。
機会があれば会いたいと思う。