艶ちゃんと対談

町内会長さんの奥さんである。先日会ったら脚を痛そうにしていたので道路の反対側から声をかけた。最近町内会の別の奥さん70代も膝の手術をしたので心配でならなかった。わたくしは12年前に膝関節タナ障害で膝を二カ所切っている。近所の奥さんの退院後のお見舞いに行くと痛々しく杖をついていた。歩かせるのは悪いと思ったがチャイムを鳴らすとしばらくして出てきた。そこでわたくしは膝博士になっていた。出来る出来ないは別として年中冷えがくるのと痺れる時のテーピング等をレクチャーした。そして艶ちゃんである。艶ちゃんは股関節に人工関節を入れたという。そこで昔の厚生労働省が甘くちょっとした怪我にも障害認定をしていたせいで現代で手術をしても何の支給も無く怪我損だよね。そうして2人の身の上話になる。わたくしの両親が離婚後、父上の両親がいるこちらに越して来たこと離婚が原因でいじめられていたこと15歳の時に父上が事故で半身不随になりバイトをずっと掛け持ちしていたこと関節はほぼ痛めていること内臓もかなりやられたこと、母上は難病の後に脳溢血でわたくしの誕生日に他界したこと、そしてわたくしの祖父が認知症を患い洗濯物を取りに行っていた頃から身体が限界になってきたこと。王子さんのおとんが亡くなり知的障害のある妹の刑事事件、下の妹の高校卒業から大学入学、成人までの未成年後継人、そんな時に会社の社長の父親が亡くなり喪中ハガキ400枚、祖父の喪中ハガキ300枚の手書きを終えた時にわたくしは会社で倒れ1年間、息苦しく原因が解らず1年後パニック症だと診断され心が折れたこと。今は8年目だがなんとか生きていること。艶ちゃんは涙ぐんだ。いつもおねぇちゃんは元気に声をかけてくれて私すごく嬉しいの。でね、うちらの町内会の奥さんたちで焼き肉とか飲み会におねぇちゃん来てくれないか誘おうよ!って言ってたの、若い人がいないでしょ?なのにおねぇちゃんはいつも声をかけてくれて私たち本当に嬉しくてね、優しいいい子だねって。ありがとう、あのね、パニックは落ち着いているのだけれど祖母がいるいわばわたくしの実家の町内会であまり良いことを言われないんだ、男の家に行ってるとか他の町内ちょろちょろするなとか。艶ちゃんは驚いた。さらに前の会社時代のお客さんに会ったら、おねぇちゃん!障害者なんだってな!障害年金で暮らしてんだってな!財閥の孫のくせに!って言われたこともあるんだよ。ここでわたくしが涙ぐむ。艶ちゃんは怒りに震えていた。私ぜんぜん知らないしそんなに具合が悪く見えないし聞いたこともなかったから!ええ、わたくし一切言わないのですよ。そうしてマナーが悪い町内の家庭の話などを今まで黙っていたことを話し終えわたくしは若干うつがかった。傷をえぐった感じがある。艶ちゃんは言った、おねぇちゃんなら大丈夫だよ!今まで独りでやってきたのだから!わたくしは本来寡黙である。沈黙は力であり誹謗中傷は相手から運を貰うことだからね。少しのことで喜べるのが本来の人間の美しさだと思って毎日生きているんだよ。わたくしの言葉に深く頷き艶ちゃんは言った。
7月のビアパーティーと8月の焼き肉に行かない?
私、呑めないんだけど。

呑めないのかい!

人との繋がりは予定調和である。大事にしたいものだ。

一期一会。